日本の国籍法は、「単一国籍」を前提としてきました。私達YLSは、第14条による国籍選択制度(複数の国籍を持って生まれた人に対して、成人になるまでに「どちらか一方を選ばなければならない」義務)の見直しの必要性について研究しています。この制度は本人のアイデンティティを否定し、心理的な負担を強いるもので、現代の多様性を認め合う日本社会にそぐわないものになってきています。
とはいえ、国籍選択の義務を放置したり、ひとまず日本国籍選択届を提出して外国の国籍離脱の手続きをしないままにしていても黙認されており、罰則があるわけではありません。それでも、YLSが活動を始めた理由は、当事者の誰かが意見を表明しなければ、国籍法改正の見直しが始まることはないからです。
実際に国籍法が改正された「国籍確認訴訟」の例
過去には 国籍法3条1項に関する訴訟がありました。これは過去に実際にあった「婚姻関係にない父母から生まれた子が、父の認知を受けても国籍を取得できない」という不合理な規定に関するものです。原告は日本人の父親・フィリピン人の母親を持つ9人のハーフの子供達で、2005年4月12日、「両親の結婚を条件としている国籍法3条は法の下の平等を定めた憲法14条1項に違反する」として、日本国籍を持つことの確認を求める訴えを東京地裁に集団で提訴しました。裁判を通じてこの問題が社会に広く認識され、最終的に2008年12月12日、国籍法が改正されました(施行は2009年1月1日)。
これにより、日本人の父親と外国人の母親の子供は、両親が婚姻関係になくても、父親の認知を受けている場合は、日本の国籍が取得可能になりました。
両親が結婚しているか、いないかで、子供の国籍が違ったなんて、今思うと信じられないことですが、当時、当事者やその家族や支援者の方が声を上げたことが、実際に法律を変えることにつながった、市民が勇気を出して声をあげることが重要なプロセスであるということを実際に示しています。
みんなの声が未来を変えるきっかけになる
国籍法3条1項の改正が実現したように、第14条の国籍選択制度の廃止のためにも、多くの人が意見を表明することが必要です。署名活動、SNSでの発信、議論への参加など、一人ひとりの行動が積み重なれば社会を動かす力になります。
国籍選択義務を持つ当事者の方の多くが、「放置していても罰則は無い」「ひとまず日本国籍の選択届を出して、外国籍は離脱の手続きをせずそのままにしておけば実質黙認されているので問題ない」として、国籍法第14条が見直されなくても直接の害はない、と思われるかもしれません。
しかし、国籍選択義務が廃止されないままでは、複数国籍をもって生まれ育った日本人の、アイデンティティの否定や、複数国籍のままでいることを「違法だ」と考える人はなくならないままです。
「国籍を選ばされるのではなく、ありのままの自分を認められる社会へ」
そのために、今こそ、一緒に声をあげることが大切だと考えています。
当事者や、国籍選択義務への疑問に共感して下さる方、活動への参加や、応援をお願いいたします。



