国籍選択手続きの、謎?

国籍法14条1項により、重国籍で生まれた日本人は、成人(18歳)から2年以内、つまり20歳までに国籍選択をすることが法律上義務とされています。

筆者の私は、現在18歳と10か月。法律で定められた国籍選択の期限までは、残りあと1年ちょっとしかありません。

私自身は、この活動のために、自分で色々と調べていますが、一般的には重国籍者本人や家族も国籍選択の時期や手続きの方法について理解している人よりも、「良く分からないけど、その時になったら手紙か何かが届くのだろう」という程度に考えている人がほとんどだと思います。

しかし、実際には、本人に手紙が届くわけではないのです・・・。

私もそれを知ったときは、驚きました。ただし、実際に自分で調べてみないと本当の事は分かりません。ということで、実際に国籍選択の届け出に関係する役所に電話で問い合わせをしてみました。


まずは、国籍選択の届け出について簡単に整理してみます。

国籍選択の届け出先
日本在住の場合:本籍地又は居住地の市町村役場
海外在住の場合:日本国大使館・総領事館などの在外公館

国籍選択の時期
外国及び日本の国籍を有することとなった時が18歳に達する以前であるときは20歳に達するまで、その時が18歳に達した後である時はその時から2年以内。この期限を過ぎてしまった場合であっても、届出をする必要があります。

国籍選択の方法
日本国籍を選択する場合:「国籍選択届」を提出します。(詳しくは⇒法務省:国籍選択の届出
日本国籍を離脱する場合:「国籍離脱届」を提出します。(詳しくは⇒法務省:国籍離脱の届出


ということで、私の戸籍のある福岡県内と、現在住んでいるローマで、電話を使って問い合わせをして教えていただきました。

Q. 複数国籍者が20歳になる際に、国籍選択義務についてのいつ、どのように手続きするかなどのお手紙などが届きますか?

【福岡法務局・国籍課】
A.国籍選択の届け出は、市町村役場や、海外在住の場合は大使館などで行うので、法務局から案内の郵送などは出していません。

【福岡県内の私の戸籍がある市町村役場・市民課】
A.20歳になる頃に、国籍選択の届出を出してくださいという案内は郵送していません。
(※用紙のダウンロード:いくつかの市区町村では国籍選択届の用紙がダウンロードできましたが、ダウンロードサービスの中に国籍選択の届け出の用紙が含まれていない場合も多いようでした。)

【在イタリア日本国大使館】
A.20歳になる頃に、国籍選択の届出を出してくださいという案内は郵送していませんが、20歳を過ぎて大使館でパスポート申請をされる際に国籍選択の届け出を案内することがあります。パスポート申請時に一緒に手続きをするといいですよ。
(※用紙のダウンロード:市区町村と同様に、用紙がダウンロードできる大使館・総領事館と、そうでない場合が国によって違うようです。また、外務省の用紙では、日本国籍を選択しない場合の用紙は法務省の「国籍離脱届」とは少し違う「国籍喪失届」でした。)


ということで、国籍選択は国籍法第14条1項で定められていますが、「国籍選択をする必要がある当事者宛てに、通知や案内はない」ということがわかりました。免許更新や、確定申告には案内が来るけど、国籍選択は法律に書かれている届出時期に、案内は来ない。誰でもみんなが知っている内容ではないので、当事者でも知らないまま、ずっと重国籍と言う場合のほうが圧倒的に多いのではないかと予想できます。これが、重国籍が「黙認」されていると言われている背景です。

重国籍のハーフにとって、国籍選択をするということは生活面・精神面において大きな影響を及ぼします。かといって、黙認されている状況でも国籍選択に関する実状はあまり知られておらず、国籍選択をしないままの重国籍者は「重国籍がばれたら、国籍はく奪になるかも」という重圧を感じていたり、どこかで「重国籍は違法だ」と批判を受けたりするという現実があります。

日本における重国籍(と思われる)日本人の推定人数は90万人を超えるというデータもあります。2023年に生まれた新生児の48人中1人は父母のどちらかが外国人でした。重国籍の若者が将来の国籍選択を不安に思って育つ必要が無いよう、国籍法第14条1項の改正が検討されることを強く願っています。

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