前回、「国籍選択手続きって、どうするの?」というブログを書きました。
今回はその続きで、「国籍選択手続き、しないとどうなる?」という、多くの複数国籍者が不安に思っている疑問について、書いてみたいと思います。
重国籍の方なら、一度くらいは「国籍選択 出さない」「二重国籍 バレたら」と検索したことがある人がいらっしゃるのではないでしょうか。
国籍法では、法務大臣は書面で国籍の選択を催告でき(15条1項)、催告後も選択しないでいると日本国籍を失う(15条3項)とされています。しかし、日本弁護士連合会の「わかりやすい国籍法Q&A 日本の国籍制度の全体像を知るためのパンフレット」(2024年6月)によると、実際に今まで一度も催告が実施されたことはなく、催告の結果日本国籍を失った人も一人もいないことが報告されています。このことから、国籍選択届について知らなかったり、どちらかの国籍が無くなると困ってしまうことから届け出を出せないままでいたりしても、罰則があったり国籍はく奪になったりするわけではないことが分かります。
筆者の私自身は、日本とイタリアの二重国籍で、将来は日本に住んで日本で仕事をしたいと希望していますが、現在18歳でローマ大学に通っています。例えば、20歳までに日本国籍を選択した場合、イタリアに住むためには滞在許可を申請する必要があります。また、EU国籍がないと応募できないもので挑戦したいことがあるので、将来は日本国籍を選ぶことになるかもしれませんが、せめてあと数年はイタリア国籍を保持しておきたいです。
では、国籍選択をしないままの場合、多くの人が不安になるのはどんなことでしょうか?それは、日本人としてのパスポート申請手続きや、行政上の手続きなどが通常通り行えるかどうかということではないかと思います。電話で問い合わせた内容と、教えていただいた回答を記載します。
Q1. 国籍選択をしていない状態で20歳以降に「パスポート申請」をする際、日本のパスポートが作れなかったりと、問題になる可能性がありますか?
【福岡県・パスポートセンター】
A.国籍選択をしていないからパスポート申請できないという事はありません。パスポート申請をする際、複数国籍の人が「現在外国の国籍を有していますか」とチェックを入れる項目はありますが、その回答により日本のパスポートが作れないことはありません。また、パスポートセンターでは複数国籍の人にに国籍選択のチラシを渡しています。
【在イタリア日本国大使館】
A.パスポート申請時に問題になるかどうかは、実際に手続きをしてもらう時しかわからないのでお伝え出来ませんが、パスポートの発行と国籍選択を同時にすることをお勧めします。パスポート申請の際に、まとめて国籍選択の届け出も一緒にできます。日本でもイタリアにある日本大使館でも手続きができます。
Q2. 国籍選択をしていない状態で20歳以降に婚姻届や出生届など戸籍に関係する手続きを行う際、手続きができないなどの問題が生じる可能性がありますか?
【福岡県内の私の戸籍がある市町村役場・市民課】
A.複数国籍の人の国籍選択の手続きは市町村役場でできますが、国籍選択の届出をしていないからと言って、市役所の手続きができなくなることはありません。複数国籍の人も日本の国籍を持っていれば、他の日本人の方と同様に戸籍があるため、他の方と取り扱い上の違いはありません。
これを知ると少し安心できます。
いわゆる「ハーフ」で重国籍で生まれ育った人のための国籍選択については、当事者への通知もなく一般的にあまり知られておらず、「ハーフは国籍選択をしないといけないらしい」「国籍選択しないでいると催告が来て放置していると国籍はく奪されるかも」とあいまいな情報がインターネット上にも溢れています。
私たちは、国籍選択義務を将来持つことになる日本の重国籍の子供達や若者、そして社会が、少しでも国籍選択にまつわる実状を知っていただけるように、微力ですが調査などを通じて情報発信をしていきたいと思います。



